服薬情報等提供料は、調剤後もフォローアップを行うことで患者さんの服用薬や服薬状況などの情報を把握し、医療機関へ情報提供を行った場合に算定できる加算です。
トレーシングレポートに関する業務を評価した項目です。
令和6年度(2024年度)調剤報酬改定では、服薬情報等提供料の2が3区分になり、リフィル処方箋に基づく調剤に伴う情報提供の項目が追加されたほか、情報提供先として介護支援専門員が追加されるなどの変更がありました。
ここでは、服薬情報等提供料1、2、3について、算定要件とポイントをまとめました。
服薬情報等提供料1・2・3の概要
まずは、服薬情報等提供料の全体像についてです。
服薬情報等提供料の1、2、3を表にまとめました。
服薬情報等提供料1は医療機関からの求め、2は薬剤師が必要と認めた場合、3は入院を予定する患者さんについて保険医療機関から求めがあった場合に情報提供を行った際に算定できます。
いずれも、患者さんの同意と文書による情報提供が必要です。
服薬情報等提供料の算定要件
服薬情報等提供料1(30点)
服薬情報等提供料1は、保険医療機関の求めに応じて情報提供を行った際に算定できます。
服薬情報等提供料1(30点)
1については、保険医療機関の求めがあった場合において、患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も当該患者の服用薬の情報等について把握し、保険医療機関に必要な情報を文書により提供等した場合に月1回に限り算定する。
服薬情報等提供料1の具体的な算定場面として、次のようなケースが挙げられます。
- 医療機関が残薬報告を求めている場合
- 分割調剤およびリフィル処方箋による調剤において、2回目以降の調剤時に患者さんの服薬状況、体調の変化等について確認し、処方医へ情報提供を行った場合
- 入院前の患者さんの服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合
①の残薬報告においては、単に残薬数を報告するだけでなく、残薬が生じている場合はその理由と対策を含めた情報提供を行います。
②の分割調剤およびリフィル処方箋における情報提供では、
- 残薬の有無(残薬が生じている場合はその量及び理由)
- 副作用の有無(副作用が生じている場合はその原因の可能性がある薬剤の推定)
を含めた情報提供を行います。
③の入院前の服用薬の情報提供では、基本的には自薬局で調剤している薬について情報提供を行います。
他薬局で調剤されている薬や市販薬についてもわかれば、併せて情報提供を行うとよいでしょう。
服薬情報等提供料2(20点)
服薬情報等提供料2は、薬剤師が必要と認める場合に「保険医療機関」「リフィル処方箋の処方医」「介護支援専門員」に対して情報提供を行った際に算定できます。
服薬情報等提供料2(20点)
- イ:保険医療機関に必要な情報を文書により提供した場合
- ロ:リフィル処方箋による調剤後、処方医に必要な情報を文書により提供した場合
- ハ:介護支援専門員に必要な情報を文書により提供した場合
2については、保険薬剤師がその必要性を認めた場合において、当該患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も患者の服用薬の情報等について把握し、保険医療機関又は介護支援専門員に必要な情報を文書により提供を行った場合に月1回に限り算定する。
服薬情報等提供料2は、令和6年度改定で変更のあった項目です。
患者等への情報提供が要件から削除されたほか、リフィル処方箋に基づく報告、介護支援専門員への報告が新しく追加されました。
イ:保険医療機関への情報提供
患者さんの服用薬の残薬、副作用の発現状況等を確認し、薬剤師が必要と認めた場合に、処方箋を発行した保険医療機関に対して情報提供を行った場合がこれに該当します。
歯科医療機関を受診している患者さんについて、歯科医療機関に対して他の医療機関から処方されている服用薬、服薬状況等の情報提供を行った場合もこれに該当します。
令和6年度改定で、情報提供先に「歯科」が含まれることが明記されました。
ロ:リフィル処方箋の処方医への情報提供
リフィル処方箋に基づく調剤後、薬剤師が必要と認めて、処方医に対して患者さんの服薬状況等について情報提供を行った場合がこれに該当します。
ハ:介護支援専門員への情報提供
介護支援専門員が関与する要介護又は要支援認定を受けた患者さんで、薬剤師が必要と認めて、介護支援専門員に対して患者さんの服薬状況等を情報提供を行った場合がこれに該当します。
介護支援専門員からの情報提供の求めがあった場合においても、薬剤師が情報提供の必要性を認めたうえで情報提供を行う場合は、服薬情報等提供料2のハを算定できます。
ただし、居宅療養管理指導を同一月に算定している場合は服薬情報等提供料は算定できないので注意が必要です。
服薬情報等提供料3(50点)
服薬情報等提供料3は、入院を予定している患者さんについて、保険医療機関からの求めに応じて情報提供を行った場合に算定できます。
服薬情報等提供料3(50点)
3については、入院前の患者に係る保険医療機関の求めがあった場合において、当該患者の同意を得た上で、当該患者の服用薬の情報等について一元的に把握し、必要に応じて当該患者が保険薬局に持参した服用薬の整理を行うとともに、保険医療機関に必要な情報を文書により提供等した場合に3月に1回に限り算定する。
ここでの「保険医療機関からの求め」についてですが、入院予定の保険医療機関のほか、患者さんが受診している他の保険医療機関からの求めも含みます。
服薬情報等提供料3では、自薬局で調剤している薬だけでなく他薬局で調剤されている薬も含め一元的に把握し、情報提供を行う必要があります。
他薬局でもらっている薬については、患者さん本人や家族への聞き取りを行ったり、医療機関へ問い合わせるなどして一元的に把握し、情報提供を行う必要があります。
服薬情報等提供料の令和6年度改定での変更点
服薬情報等提供料の令和6年(2024年)度改定での主な変更点は以下の通りです。
- 服薬情報等提供料2が「保険医療機関」「リフィル処方箋の処方医」「介護支援専門員」の3区分に変更(いずれも文書による情報提供が必要)
- 服薬情報等提供料2の「患者若しくはその家族等の求めがあった場合」「患者若しくはその家族等へ必要な情報提供、指導等を行った場合」の文言が削除
- 「薬歴に記載」の文言が削除
- 情報提供先に「歯科」が含まれることが明記
令和6年度改定では、主に服薬情報等提供料2の内容に変更がありました。
服薬情報等提供料2について、情報提供相手が3区分になり「リフィル処方箋の処方医」「介護支援専門員」が追加されました。
いずれの場合も、文書による情報提供が必要です。
服薬情報等提供料2の「患者若しくはその家族等」への情報提供に関する文言は削除され、患者さんへ情報提供を行っただけでは算定できなくなりました。
服薬情報等提供料の算定時の注意点・疑義解釈
服薬情報等提供料の算定時の注意点と疑義解釈をまとめました。
- 服薬情報等提供料の1、2、3は異なる内容についての情報提供であれば、同一月内にそれぞれ算定できる
- 「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定している患者では、算定できない
- 「特別調剤基本料」を算定している場合は一部を除き、算定できない
- 特別調剤基本料A:敷地内薬局→敷地内医療機関への情報提供の場合は算定不可
- 特別調剤基本料B:算定不可
服薬情報等提供料1、2、3は、異なる内容についての情報提供であれば、同一月内にそれぞれ算定できます。
服薬情報等提供料について、「保険医療機関への情報提供については、患者1人につき同一月に2回以上服薬情報等の提供を行った場合においても、月1回のみの算定とする」こととされているが、服薬情報等提供料1、2又は3をそれぞれ同一月に1回算定することは可能か。
可能。ただし、同一の情報を同一保険医療機関に対して提供した場合は算定できない。なお、保険医療機関への情報提供については、服薬情報等提供料1及び2については月1回に限り、服薬情報等提供料3については3月に1回に限り算定可。
(出典:疑義解釈資料の送付について(その3)令和4年4月11日|厚生労働省)
服薬情報等提供料1を算定する患者について、同一月内に服薬情報等提供料3は算定可能か。
異なる内容について情報提供を行う場合は、算定可。
また、以下の場合は服薬情報等提供料は算定できません。
服薬情報等提供料が算定できない場面
- 「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定している患者では、算定できない
- 「特別調剤基本料」を算定している場合は一部を除き、算定できない
- 特別調剤基本料A:敷地内薬局→敷地内医療機関への情報提供の場合は算定不可
- 特別調剤基本料B:算定不可
「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定している場合は、同じ月内は「服薬情報等提供料」を算定できません。
服薬情報等提供料について、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している場合には算定できないこととされているが、同一月内でこれらの指導料等を算定していれば、服薬情報等提供料は算定できないのか。
かかりつけ薬剤師指導料等を算定している月であれば、服薬情報等提供料に相当する業務も当該指導料等の中で行うことになるので、服薬情報等提供料は算定できない。
服薬情報等提供料とトレーシングレポート
情報提供に当たっては、別紙様式1-1、別紙様式1-2またはこれに準ずる様式の文書等を用いて行います。
情報提供の内容としては、服薬情報等提供料1、2、3それぞれ以下の内容について行います。
なお、残薬に係る情報提供に関しては、単に残薬数を記載するだけでなく、残薬が生じている理由とその後の残薬が生じないための対策を併せて記載する必要があります。
令和6年度改定で、「単に確認された残薬の状況を記載するだけでなく、その後の残薬が生じないために必要な内容を併せて記載すべき」との文言が追加されました。
状況報告を行うだけでなく、薬学的観点からの提案を加えた情報提供を行うべきということだね。
また、服用期間中の体調変化等の患者さんの訴えや自覚症状がある場合には、それが薬の副作用によるものかどうかの分析結果も踏まえて服薬指導を行い、その分析結果と指導の要点を情報提供することとされています。
薬の副作用によるものかどうかの分析にあたっては、「重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)」が参考になります。