重複投薬や相互作用の防止目的で処方医へ疑義照会を行い、処方が変更された場合に算定できる「重複投薬・相互作用等防止加算」。
令和6年(2024年)度改定では、残薬調整を行った場合の点数が30点から20点へ減点されるなどの変更がありました。
ここでは、重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件についてまとめました。
重複投薬・相互作用等防止加算の概要
重複投薬・相互作用等防止加算は、重複投薬や相互作用の防止目的で処方医へ疑義照会を行い、処方が変更された場合に算定できる加算です。
「残薬調整に係るもの以外の場合」と「残薬調整に係るものの場合」の2区分あり、点数が異なります。
重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件
重複投薬・相互作用等防止加算の算定要件は以下のようになっています。
重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整以外 40点/残薬調整 20点)
薬剤服用歴等に基づき、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合(別に厚生労働大臣が定める保険薬局において行われた場合を除く。)は、重複投薬・相互作用等防止加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
ただし、区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料、区分番号15の2に掲げる在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料又は区分番号15の3に掲げる在宅患者緊急時等共同指導料を算定している患者については、算定しない。
- イ:残薬調整に係るもの以外の場合 40点
- ロ:残薬調整に係るものの場合 20点
(出典:診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 厚生労働省告示第57号 別表第三調剤報酬点数表|厚生労働省)
- ア 重複投薬・相互作用等防止加算は、薬剤服用歴等又は患者及びその家族等からの情報等に基づき、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に処方箋受付1回につき算定する。ただし、複数の項目に該当した場合であっても、重複して算定することはできない。なお、調剤管理料を算定していない場合は、当該加算は算定できない。また、当該加算を算定する場合においては、残薬及び重複投薬が生じる理由を分析するとともに、処方医に対して連絡・確認する際に必要に応じてその理由を処方医に情報提供すること。
- イ 「イ 残薬調整に係るもの以外の場合」は、次に掲げる内容について、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に算定する。
- (イ) 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
- (ロ) 併用薬、飲食物等との相互作用
- (ハ) そのほか薬学的観点から必要と認める事項
- ウ 「ロ 残薬調整に係るものの場合」は、残薬について、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に算定する。
- エ 重複投薬・相互作用等防止加算の対象となる事項について、処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴等に記載する。
- オ 同時に複数の処方箋を受け付け、複数の処方箋について薬剤を変更した場合であっても、1回に限り算定する。
- カ 当該加算は、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者については算定できない。
(出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 |厚生労働省)
イ:残薬調整に係るもの以外の場合(40点)
重複投薬・相互作用等防止加算の「イ」は、以下に挙げるような内容について処方医に疑義照会を行い、処方の変更が行われた場合に算定できます。
- 同種・同効の併用薬との重複
- 併用薬・飲食物等との相互作用
- 過去のアレルギー歴・副作用歴
- 年齢や体重による影響
- 肝機能、腎機能等による影響
- 授乳・妊婦への影響
- 薬学的観点からの処方追加や日数延長
算定には、これら内容について疑義照会し処方が変更される必要があります。
平成28年度改定より、アレルギー歴や副作用歴による処方変更、薬学的観点からの薬剤の追加や日数の延長を行った場合なども「重複投薬・相互作用等防止加算」を算定できるようになりました。
また、同一医療機関の同一診療科からの処方箋であっても、要件を満たす場合は「重複投薬・相互作用等防止加算」を算定できます。
疑義解釈
重複投薬・相互作用等防止加算及び在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定対象の範囲について、「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」とあるが、具体的にはどのような内容が含まれるのか。
薬剤師が薬学的観点から必要と認め、処方医に疑義照会した上で処方が変更された場合は算定可能である。具体的には、アレルギー歴や副作用歴などの情報に基づき処方変更となった場合、薬学的観点から薬剤の追加や投与期間の延長が行われた場合は対象となるが、保険薬局に備蓄がないため処方医に疑義照会して他の医薬品に変更した場合などは当てはまらない。
これまでの「重複投薬・相互作用防止加算」では、同一医療機関の同一診療科の処方せんについて処方変更があったとしても算定できないとされていたが、平成28年度診療報酬改定で見直した「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」については、同一医療機関の同一診療科から発行された処方せんであっても、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して照会を行い、処方に変更が行われた場合は算定可能と理解してよいか。
「重複投薬・相互作用等防止加算」及び「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」は、薬学的観点から必要と認められる事項により処方が変更された場合には算定可能としているので、上記の内容も含め、これまで算定できないとされていた「薬剤の追加、投与期間の延長」等であっても、要件に該当するものについては算定可能である。
ロ:残薬調整に係るものの場合(20点)
重複投薬・相互作用等防止加算の「ロ」は、残薬数を処方医へ連絡し、処方が変更された場合に算定できます。
重複投薬・相互作用等防止加算の算定時の注意点・ポイント
- 処方箋受付1回につき1回のみ算定できる
- 処方医に連絡・確認を行った内容の要点・変更内容を薬歴に記載する
- 残薬及び重複投薬が生じる理由を分析するとともに、必要に応じてその理由を処方医に情報提供する
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者については算定できない
「重複投薬・相互作用等防止加算」は、処方箋受付1回につき1回のみ算定できます。
同時に複数の処方箋を受け付け、それぞれの処方箋について疑義照会を行い処方変更があった場合でも、算定できるのは1回のみです。
薬歴には、重複投薬・相互作用等防止加算の対象となる事項について、処方医へ問い合わせを行った内容やそれにより処方がどう変更されたかなどを記載します。
また、令和6年度改定より、留意事項に「当該加算を算定する場合においては、残薬及び重複投薬が生じる理由を分析するとともに、処方医に対して連絡・確認する際に必要に応じてその理由を処方医に情報提供すること」との文言が追加されました。
これまでは、残薬調整などで「重複投薬・相互作用等防止加算」を算定するのに併せて、トレーシングレポートで処方医へ情報提供を行い「服薬情報等提供料2」を算定することもできましたが、理由の分析と情報提供までが「重複投薬・相互作用等防止加算」に含まれることが示されたことで、単なる情報提供のみで服薬情報等提供料を併せて算定することが難しくなりました。
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服薬情報等提供料1・2・3の算定要件まとめ【令和6年(2024年)度改定】
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