令和6年度(2024年度)調剤報酬改定では、RMP資材を用いて患者さんへ説明を行った場合に算定できる「特定薬剤管理指導加算3のイ」が新設されました。
今回の改定で、「RMP」という言葉を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか?
ここでは、
- RMP資材とは?
- RMP資材の探し方は?
- RMP資材のある医薬品の例は?
- RMP資材に関する加算(特定薬剤管理指導加算3)の算定要件は?
といった疑問を解決します。
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特定薬剤管理指導加算1・3の算定要件と疑義解釈まとめ【令和6年(2024年)度改定】
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RMP資材とは?
RMPとは「医薬品リスク管理計画」のことで、RMP資材とは「RMPの追加のリスク最小化活動(情報提供)の一環として作成された資材」のことをいいます。
医薬品の開発段階では、症例数に限りがあるため全てのリスクを特定することは困難です。
そのため、重要な特定されたリスク、関連は疑わしいが十分に確認できていないリスク、高齢者や小児など症例数が少なく情報不足の条件について、どのように情報収集し、情報提供するかがRMPに記載されています。
このリスクを軽減し回避するための情報提供(リスク最小化活動)の一環で作成された資材が「RMP資材」です。
RMP資材には、医療従事者向けと患者向けがあり、「特定薬剤管理指導加算3のイ」を算定する上では、患者向け資材を用いる必要があります。
なお、RMP資材には以下のようなマークが付いています。
(参考:平成29年6月8日付け事務連絡「医薬品リスク管理計画(RMP)における追加のリスク最小化活動のために作成・配布する資材への表示について」)
RMP資材の探し方
全ての医薬品でRMPの策定・実施が義務づけられているわけではありません。
RMPの策定・実施が義務付けられている医薬品については、PMDAのホームページで確認できます。
RMPの策定・実施が解除されることもあるので、その都度、最新の情報をチェックする必要があります。
患者向けRMP資材は、PMDAのページ(RMP提出品目一覧)から以下の手順で探すことができます。
RMP資材を探す手順
- RMP提出品目一覧を開く
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0001.html - 調べたい品目の「添付文書等」をクリックする
- RMP資材「患者向け」の欄の資材名をクリックする
補足
RMP資材の「患者向け」がない場合は「-」で表示されます。
RMP資材を用いた加算(特定薬剤管理指導加算3のイ)の算定のポイント
まずは、「特定薬剤管理指導加算3のイ」の算定要件についてです。
特定薬剤管理指導加算3のイ(5点)
- 服薬管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指導等に加えて、処方された医薬品について、保険薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定する。
- 「イ」については、「10の2」調剤管理料の1の(1)を踏まえ、「当該医薬品の医薬品リスク管理計画に基づき製造販売業者が作成した当該医薬品に係る安全管理等に関する資料を当該患者に対して最初に用いた場合」とは、以下のいずれかの場合をいう。
- RMPの策定が義務づけられている医薬品について、当該医薬品を新たに処方された場合に限り、患者又はその家族等に対し、RMPに基づきRMPに係る情報提供資材を活用し、副作用、併用禁忌等の当該医薬品の特性を踏まえ、適正使用や安全性等に関して十分な指導を行った場合
- 処方された薬剤について緊急安全性情報、安全性速報が新たに発出された場合等に、安全性に係る情報について提供及び十分な指導を行った場合
(出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 |厚生労働省)
また、疑義解釈にて、以下のように示されています。
特定薬剤管理指導加算3の「イ」について、RMPに係る患者向け資材がない医薬品については算定できないのか。また、薬機法の再審査が終了し、RMPの策定・実施が解除された医薬品については算定の対象外になるのか。
いずれの場合も算定不可。RMP提出品目及び資材については、医薬品医療機器総合機構のウェブサイトにて最新の情報を確認した上で指導をすること。
(https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/itemsinformation/rmp/0001.html)特定薬剤管理指導加算3の「イ」について、患者向けの医薬品リスク管理計画(以下、RMPという。)に係る資材を用いて指導を行った場合は、指導に使用した患者向けRMP資材を薬剤服用歴等に添付もしくは資材の名称等を記載する必要があるのか。
患者向けRMP資材の薬剤服用歴等への添付及び資材の名称等の記載は不要であるが、指導の要点を薬剤服用歴等に記載すること。
つまり、「特定薬剤管理指導加算3のイ」を算定するには、以下のポイントを満たす必要があります。
- 最初に処方された1回に限り算定
- RMP資材(患者向け)を用いて説明を行う
- 薬歴には、指導の要点を記載する
ここで、「最初に処方された1回」についての解釈ですが、その患者さんに対して新規で処方された場合に加え、継続薬の場合も初回に限り算定できるとの疑義解釈が追加されました。
特定薬剤管理指導加算3の「イ」又は「ロ」について、当該患者が継続して使用している医薬品ではあるが、当該医薬品に関して、保険薬剤師が重点的な服薬指導が必要と認め、当該加算の算定要件を満たす説明及び指導を行った場合、初回に限り算定できるか。
算定可能。
特定薬剤管理指導加算については、別の記事でまとめているのでそちらも参照ください。
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特定薬剤管理指導加算1・3の算定要件と疑義解釈まとめ【令和6年(2024年)度改定】
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RMP資材を用いた加算(特定薬剤管理指導加算3のイ)の実際の運用例
PMDAのRMP提出品目一覧のページをみるとわかりますが、全ての医薬品が対象でないうえに、RMPが策定されていても患者向け資材のない医薬品も多くあります。
レセコンや薬歴のシステムによっては、RMP対象かを表示してくれたり、薬歴の画面上からRMP資材を確認できるものもありますが、そうでない場合は自分でその都度調べる必要があり大変です。
そんなこと忙しい薬局業務中にやってられないよ…
そこで、参考として、加算(特定薬剤管理指導加算3のイ)の算定漏れを防ぐための対策と運用例をいくつかあげてみました。
- 患者向けRMP資材のある医薬品をリストにしておく
- 薬品棚や箱に印をつけてRMP対象と調剤時にわかるようにしておく
- 患者向けRMP資材をメーカーから取り寄せ or 印刷しておく
RMP資材の有無をその都度調べるのは大変なので、前もってRMP提出品目の一覧から自分の薬局でよくでるものを抽出し、患者向けRMP資材がある医薬品をリストにしておくのが良いと思います。
事務さんにもそのリストを共有し、入力時に新規で対象品目があれば薬剤師に声をかけるようにしてもらうと算定漏れを防ぐことができます。
また、RMP資材のある医薬品の薬品棚や薬の箱に目印をつけてRMP資材のある医薬品とわかるようにしておくと、調剤時にも気づくことができます。
資材についてはその都度パソコンから検索・印刷していると手間になるので、事前にメーカーさんから取り寄せ、あるいは印刷したものを準備しておくのが良いと思います。
新規薬採用時には、RMP資材があるかを調べて取り寄せるまでをルーチン化してしまうと、新しい薬での算定漏れも防ぐことができます。
RMP資材のある医薬品の例
参考までに、患者向けRMP資材のある医薬品のなかでどこの薬局でも出そうな医薬品の例をあげておきます。
患者向けRMP資材のある医薬品の例
- アシテアダニ舌下錠
- イグザレルト(小児)
- イナビル
- イフェクサー
- インチュニブ
- エンレスト(心不全)
- カナグル
- ケレンディア
- シダキュアスギ花粉舌下錠
- ジャディアンス
- スーグラ
- ゾフルーザ
- タリージェ
- デエビゴ
- フォシーガ
- マリゼブ
- ミティキュアダニ舌下錠
- ミネブロ
- メトアナ
- モイゼルト軟膏
- ラミクタール
- ルセフィ
- レキサルティ
- ロコアテープ
(2024年9月1日時点での対象品目の例)
さいごに
今回は、特定薬剤管理指導加算3のイの算定要件となっているRMP資材についてまとめました。
算定にあたり、患者向けRMP資材のある医薬品が一覧になっていると助かるのですが、PMDAのページからはRMPの策定されている医薬品の一覧しかわかりません。
何人かの方が、患者向けRMP資材のある医薬品の一覧を作成してくれているので、そういったものを活用するのもいいかと思います。
レセコンや薬歴上でRMP対象品目がわかり、資材の表示(ダウンロード)までできるといいのですが、まだ一部のメーカーさんしか対応できてないようです。
今後に期待です!
また、単に加算算定のためだけでなく、RMP資材には服用時の注意点や注意すべき副作用などがまとめられているため、服薬指導に活用することでより充実した服薬指導を行うことができます。
RMPには添付文書にはまだ載っていない潜在的なリスクも掲載されているため、RMP自体にも目を通しておくといいでしょう。
ぜひ、RMP資材を普段の服薬指導に活用してみてください。