加算

特定薬剤管理指導加算1・3の算定要件と疑義解釈まとめ【令和6年(2024年)度改定】

特定薬剤管理指導加算1・3の算定要件を解説

令和6年度(2024年度)調剤報酬改定で、特定薬剤管理指導加算の内容に変更がありました。

特定薬剤管理指導加算は今まで1、2の2つに分類されていましたが、今年度の改定で1の内容が変更になったほか、3が新設されました。

ここでは、今回変更のあった特定薬剤管理指導加算の1と3について、算定要件とポイントを疑義解釈の内容をふまえてまとめました。

特定薬剤管理指導加算1

特定薬剤管理指導加算1

「特定薬剤管理指導加算1」は、特に安全管理が必要な薬剤(ハイリスク薬)が処方されたときに算定できる加算です。

今年度の改定で、算定できる場面が明確化されました。

:特に安全管理が必要な医薬品が新たに処方された患者に対して必要な指導を行った場合 10点

:特に安全管理が必要な医薬品に係る用法又は用量の変更、患者の副作用の発現状況等に基づき薬剤師が必要と認めて指導を行った場合 5点

算定できる場面が明確化されたことで、いわゆるベタ取りができなくなりました。

イ:新たに処方されたもの(10点)

特定薬剤管理指導加算1の「イ」は、ハイリスク薬が新たに処方された場合に限り算定できます

当薬局では初めてでも、患者さんが他薬局でもらって継続服用している薬であれば算定することができません。

ロ:用法・用量の変更、副作用の発現状況の変化等(5点)

特定薬剤管理指導加算1の「ロ」は、ハイリスク薬の用法用量が変更になった場合に算定できます

また、副作用の発現状況や服薬状況などの変化があり、薬剤師が必要と認めて指導を行った場合にも算定できます

特定薬剤管理指導加算1の算定時の注意点・疑義解釈

「特定薬剤管理指導加算1」の算定時の注意点と疑義解釈の一覧をまとめました。

  • 処方箋受付1回につき1回のみ算定できる
  • 「イ」「ロ」は同時算定できない
  • 「イ」は、当薬局では新規でも他薬局での継続薬であれば算定できない
  • 「イ」は、同一成分の単なる銘柄変更(例:トーワ→サワイなど)では算定できない
  • 薬歴へは「確認した内容や行った指導の要点」の記載を行う

(出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 |厚生労働省

疑義解釈一覧

特定薬剤管理指導加算1について、「イ」又は「ロ」に該当する複数の医薬品がそれぞれ処方されている場合に、「イ」及び「ロ」はそれぞれ算定可能か。

特定薬剤管理指導加算1はハイリスク薬に係る処方に対して評価するものであり、1回の処方で「イ」又は「ロ」に該当する複数の医薬品が存在し、それぞれについて必要な指導を行った場合であっても、「イ」又は「ロ」のみ算定すること。

特定薬剤管理指導加算1の「イ」について、以下の場合には算定できないと考えてよいか。
① 患者としては継続して使用している医薬品ではあるが、当該薬局において初めて患者の処方を受け付けた場合
② 同一成分の異なる銘柄の医薬品に変更された場合

いずれもそのとおり。なお、いずれの場合においても、保険薬剤師が必要と認めて指導を行った場合には、要件をみたせば特定薬剤管理指導加算1の「ロ」が算定可能。

関連記事
特定薬剤管理指導加算1の算定対象のハイリスク薬を解説
ハイリスク薬とは?特定薬剤管理指導加算1を解説【令和6年(2024年)度改定】

続きを見る

特定薬剤管理指導加算3

特定薬剤管理指導加算3

「特定薬剤管理指導加算3」は、今年度の改定で新設された加算です。

薬剤師が患者に重点的な服薬指導が必要と認め、必要な説明及び指導を行ったときに患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定する。

:特に安全性に関する説明が必要な場合で、RMPに基づく資材を用いて患者へ説明を行った時 5点

:調剤前に医薬品の選択に係る情報の説明・指導を行った時 5点
  ・選定療養の対象となる先発医薬品を選択する患者
  ・医薬品の供給状況により調剤する医薬品を変更する必要がある患者

特管3の「イ」はRMP資材を用いて説明を行った場合、「ロ」は選定療養の説明、あるいは流通不安定によるメーカー変更を行った場合に算定できます。

イ:RMP資材の活用、緊急安全性情報の提供(5点)

特定薬剤管理指導加算3の「イ」は、RMP資材(患者向け)を用いて患者さんへ説明を行った場合、あるいは処方された薬剤について緊急安全性情報、安全性速報が新たに発出された場合に情報提供及び指導を行った場合に算定できます。

RMP資材「RMPの追加のリスク最小化活動(情報提供)の一環として作成された資材」のことで、PMDAのホームページよりダウンロードできます。

>>RMP提出品目一覧|PMDA

RMPの策定が義務付けられている医薬品でも患者向けRMP資材がない医薬品もあるため注意が必要です。

RMP提出品目のリストに名前があっても、患者向け資材がない医薬品の場合は算定できません。

RMP資材については、別の記事でまとめているのでそちらも参照ください。

関連記事
RMP資材と特定薬剤管理指導加算3について解説
RMP資材とは?特定薬剤管理指導加算3のイの算定のポイント【令和6年(2024年)度改定】

続きを見る

ロ:選定療養の説明、流通不安定によるメーカー変更説明(5点)

特定薬剤管理指導加算3の「ロ」は、選定療養の説明、流通不安定によるメーカー変更の説明を行った場合に算定できます。

今年度の改定から長期収載品の選定療養の仕組みが導入されました。

患者さんの希望で後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)を選択する場合は、その差額の一部を患者さん自身で負担することになります。

特定薬剤管理指導加算3の「ロ」は、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者さんに説明を行った場合に算定できます。

選定療養の説明の結果、患者さんが先発・後発どちらを選択したとしても算定できます。

関連記事
長期収載品の選定療養を解説
長期収載品の選定療養とは?疑義解釈まとめ(令和6年10月1日施行)

続きを見る

また、特定薬剤管理指導加算3の「ロ」は、出荷調整など医薬品の供給不安定のため、前回調剤した銘柄と違う銘柄に変更して調剤した場合にも算定できます。

その場合は、レセプトに必要な数量を確保できなかった薬剤名を記載します。

特定薬剤管理指導加算3の算定時の注意点・疑義解釈

「特定薬剤管理指導加算3」の算定時の注意点と疑義解釈の一覧をまとめました。

  • 最初に処方された1回に限り算定できる
  • 「イ」「ロ」は同時算定できる
  • RMP策定品目でも、患者向け資材のないものは算定対象外
  • 「イ」は、RMP資材を用いて行った指導の要点を薬歴に記載する
  • 「ロ(選定療養)」は、説明の結果、患者が先発・後発どちらを選択しても算定できる
  • 「ロ(銘柄変更)」は、確保できなかった薬剤名をレセプトに記載する
  • 特管3は、特管1及び2と同時算定できる

(出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 |厚生労働省

疑義解釈一覧

特定薬剤管理指導加算3について、1回の処方で「イ」に該当する医薬品と「ロ」に該当する医薬品が同時に処方されている場合に、「イ」及び「ロ」をそれぞれ算定可能か。

特定薬剤管理指導料3の「イ」及び「ロ」は算定できる対象が異なることから、必要事項を満たした説明を行うのであれば算定可能。

特定薬剤管理指導加算3について、1つの医薬品が、「イ」と「ロ」の両方に該当する場合に、「イ」と「ロ」を重複して算定することが可能か。

当該事例が生じることは想定されないが、それぞれの観点で必要な説明をしているのであれば算定可能。

特定薬剤管理指導加算3の「イ」について、患者向けの医薬品リスク管理計画(以下、RMPという。)に係る資材を用いて指導を行った場合は、指導に使用した患者向けRMP資材を薬剤服用歴等に添付もしくは資材の名称等を記載する必要があるのか。

患者向けRMP資材の薬剤服用歴等への添付及び資材の名称等の記載は不要であるが、指導の要点を薬剤服用歴等に記載すること。

特定薬剤管理指導加算3の「イ」について、RMPに係る患者向け資材がない医薬品については算定できないのか。また、薬機法の再審査が終了し、RMPの策定・実施が解除された医薬品については算定の対象外になるのか。

いずれの場合も算定不可。RMP提出品目及び資材については、医薬品医療機器総合機構のウェブサイトにて最新の情報を確認した上で指導をすること。
(https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/itemsinformation/rmp/0001.html)

特定薬剤管理指導加算3の「ロ」の後発医薬品が存在する先発医薬品であって、一般名処方又は銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合には、患者が先発医薬品を希望しているにもかかわらず、説明の結果、後発医薬品を選択して選定療養とならなかった場合も算定可能か。

可能である。

特定薬剤管理指導加算3の「イ」又は「ロ」について、当該患者が継続して使用している医薬品ではあるが、当該医薬品に関して、保険薬剤師が重点的な服薬指導が必要と認め、当該加算の算定要件を満たす説明及び指導を行った場合、初回に限り算定できるか。

算定可能。

どんなときに何の加算がとれるかのまとめ

特定薬剤管理指導加算1・3まとめ

最後に、どんなときに何の加算がとれるかを簡単にまとめました。

  • ハイリスク薬が新規で処方→特管1のイ
  • ハイリスク薬の用法・用量変更→特管1のロ
  • ハイリスク薬の副作用の発現状況の変化→特管1のロ
  • RMP資材(患者向け)を用いて説明→特管3のイ
  • 緊急安全性情報、安全性速報が新たに発出され情報提供→特管3のイ
  • 選定療養の説明→特管3のロ
  • 供給不安定によるメーカー変更説明→特管3のロ

-加算